酩酊

あー

気持ちが悪い

文字を打つ手も覚束ない

あー

気持ちが悪い

画面を見る目も定まらない

あー

ここはどこなんだ

ここは休むべき場所ではない

あー

これはなんなんだ

この這いつくばる木偶の坊は

油断をすると

吐き気がする

くるしい、くるしい、くるしい

どうしてこんなにも

人生は苦しいのか

どうしてこんなにも

人生は寂しいのか

僕の詩は堕ちた

どこまでも深く堕ちた

欲望の底の

底の底の底へと

僕の魂は堕ちた

どこまでも遠く堕ちた

煩悩の果ての

先の先の先へと

快を求めた結果が

この吐き気だと言うなら

煩悩と共に消え失せようとも

二度と水に呑まれまい

愛を求め過ぎた結果が

この孤独だと言うなら

肉体と共に消え失せようとも

二度と先を望むまい

しかし

この決意も

次の間違いの伏線だとしたら

あんまりに

救いの無い話じゃないか

この誠意も

次の決別の伏線だとしたら

あんまりに

夢の無い話じゃないか

屈するものか!

屈するものか!

人生が

欲望の連鎖だとしても

決して

屈するものか

これ以上は吐いてしまう

これ以上は

かァッ

喉が焼けた

水が甘い

苦しく

寂しい

ただの

そうか

やはり

人生は欲望の連鎖だ

考えるな

もう

もう

もう

考えるな

スポンサーリンク

1 個のコメント

  • 先日この作品を生朗読で拝聴しました。
    苦しさが伝わって来て迫力が半端なくラジオ劇場のようでした。
    しかも酔っ払って吐きながら書いたと知りました。
    この状態なのに書く、それ故に書きたい!今だ!と思ったそうです。
    根っからの作家さんなのだと改めて感じました。

    最近は「生成AI」が話題でChatGPTの登場以来色々と騒がれてますが、驚異的なのは内容より人間を凌ぐそのスピードたそうです。
    確かにシンプルなヒントだけで文章を完成させるのですから凄いと思います。
    私もChatGPTが作った「走れメロス」の記事を読みましたが
    メロスは走らなかった。
    セリヌンティウスが既に王を倒すためにチームを結成していて、メロスもそこに参加して一緒に戦うという物語でした。
    面白い発想がも知れませんが、私はやっぱりメロスは走って欲しいです!!(笑)

    頼麦さんの作品に触れて思い出したのが、杜甫が書いた
    「李白一斗百篇」という句です。
    ざっくり言うと、現代の一升瓶3〜4本を1人飲み干しながら百篇もの詩を一気に作り出すという人間業とは思えない事をやった人がいるという事です。
    しかもAIと違って一篇一篇が名作だそうです。

    「醉っていれば人は死なない」
    酒に酔った者が車から落ちても傷は負えども死にはしないと解説されていました。
    通常時なら例えば事故のような危険な目に遭ったとき、人は咄嗟に身構えて驚きと恐怖で身体を強張らせてしまう不自然な状態だと。
    しかし、お酒に酔って訳もわからぬ状態では咄嗟に身構えるような意識すら生じなければ、ダメージをうまく回避出来るとの事でした。
    この記事では技術としての酩酊によって人は自然になれるのだと…。
    特別な能力や秘法を会得しなくても、頼麦さんのようにお酒という人工の液体の力を借りて至高の境地に到達出来るという事ですね。
    酔っ払い麦さん最高!!

    そして、もっと興味深い事が書いてありました。
    ワナはうさぎを捕まえがうさぎを捕まえたらワナは忘れる」
    目的を達成したのち、その手段は忘却される。
    つまり技術を通じて自然に到達したらその技術は忘却されてしまう。
    もし保持されたら、手段としての技術に依存する心が生じ
    自然から遠ざかってしまうだろうと。
    ただ、欠点がひとつ。
    その力は酔いが覚めたら失われてしまう。
    対処法はふたつ。
    ①お酒を通じて得た自然の感覚を覚めたあとに思い出すこと。つまり、「技術としての再利用である」と。
    頼麦さんのさは日記を付ける習慣があるから大丈夫ですね。

    ②二日酔いも翌朝は過酷な状態だが、これもまた「酔い」である以上、素面では到達しづらい何らかの境地に導いてくれると考えられないだろうか?というお話でした。

    超長文になり申しわけありません。

    「酩酊」という作品を目で読み耳で聴いて背景のお話を
    頼麦さんの言葉で聴いて、私の心と脳が刺激を受けて忘れていた李白一斗百篇を思い出し、関連記事を読むことが出来ました。
    ありがとうございます。
    やっぱり夜咄頼麦さんはただ者ではないらしい!!

    むぎりす

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

    CAPTCHA