【フリー台本】しじみの恩返し【1人用 |10分】

しじみの恩返し

夜咄 頼麦 作

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この文章の著作権は夜咄頼麦に帰属しますが、朗読についての著作使用権は解放しております。YouTubeでの朗読、声劇、そのほか音声表現活動などで自由にお使いください。

その際、この原作ページのURLを作品などに掲載していただきますよう、お願い申し上げます。

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むかしむかし、ある山のおく、川のそばのさとに二人の貧しい姉弟きょうだいが住んでおりました。姉は近所の手伝いをして、弟は水みをして、しずかにらしておりました。

あるあらしの日、弟が強い風の中、川に水汲みに行きますと、何やら、川から声が聞こえてきました。

よく目をこらしますと、少し流れのはやくなった川の中に、しじみの子どもたちがおりました。しじみの子どもたちは、川に流されかけながら、たすけを呼んでおります。弟は、その子たちを助けてやることにしました。

しじみの子どもたちが助けを呼んでいるのは、浅瀬あさせの少し向こうのあたりです。弟は、じゃばじゃばと足をみ入れました。川はだんだんと深くなり、しまいにはこしまできました。

初めは問題もんだいなかったのですが、しじみの子どもたちに辿たどく手前で、弟は不意ふいに強い流れにおそわれました。弟は足を取られ、そのまま流されていきました。

姉は、なかなか弟が帰ってこないので、心配になって様子ようすを見に行くことにしました。外に出ると、嵐はつよまっております。里の家々の戸はかたく閉じられ、外には誰も出ておりません。姉はむねさわぎがして、自然といそぎ足になりました。

あっという間に川に着くと、姉は弟の名前を呼びました。しかし、返事はありません。川辺には、水を汲むために弟が持ち出した木のおけが、かぜころがっております。姉はあせって、川を見渡みわたしました。

そうしますと、下流かりゅうに突き出した木のみきに、弟が必死ひっしにしがみついている様子が目に入りました。姉は急いでり、弟の身体からだかかえて、きしに引き上げてやりました。

「大丈夫かい、よく頑張がんばったね」

姉は弟をおぶって、どうにか家に帰りました。弟をやぶれた布団に寝かせますと、ひどく高い熱を出しております。顔色かおいろもよくない様子です。姉は心配になって、看病かんびょうをしてやることにしました。看病をするにも、水がります。姉は弟に声をかけました。

「ちょっと川まで戻って、水を汲んでくるからね。身体を冷やさないようにして、待っているんだよ」

姉は、土砂降どしゃぶりの中を走り、川に向かいました。川は先程さきほどよりもいきおいをしておりました。姉が木の桶を拾い、水を汲もうと川に近づきますと、何やら、かすかな声が聞こえます。

よく目をこらしますと、流れの速くなった川の中に、しじみの子どもたちがおりました。しじみの子どもたちは、川に流されかけながら、助けを呼んでおります。姉は、その子たちを助けてやることにしました。

木の桶をわきいておいて、岸辺きしべの石をいくつかどかします。どかされた石の下で嵐をやりごしていた虫たちが、あわてて別の石にもぐむのが見えました。そうして作った窪地くぼちに川の水を流し込み、水たまりをつくったのです。

姉は川に入り、流れの勢いに気をつけながら、しじみの子どもたちを両手ですくいあげました。そのまま岸に戻ると、しじみの子どもたちを水たまりにうつしてやります。しじみの子どもたちは一安心して、姉に話しかけてきました。

「助けてくれてありがとう。このお礼は必ずいたします」

「どういたしまして。ゆっくりと話していたいところだけど、家で病気の弟が待っているの。ここらでおいとましますね」

姉は弟が心配でしたので、しじみの子どもたちに別れを告げ、川の水を汲んで、家に帰りました。帰るころには雨も止み、嵐はろうとしていました。

姉は夜通よどおし弟を看病かんびょうしましたが、弟の熱は一向いっこうに下がりません。気がつくと朝になっており、かべ隙間すきまからはがさし込んでおりました。

突然、とんとんと戸を叩く音がしました。姉は、誰だろうと思って土間どまへ降り、戸を開けました。すると、不思議ふしぎなことに、そこには誰もいませんでした。

わりに、何やら大きな水がめと、木のたるが置いてあります。木の樽の中にはたっぷりの味噌が入っておりました。樽のふたの上には、手紙がえられておりました。

「ヒトのお姉さま、先日はいのちを助けていただき、ありがとうございました。こちらはお礼の品、たからの水と味噌です。どうぞ、おおさめください。しじみ一同いちどう

手紙には感謝かんしゃの言葉と、お礼の品の説明が書いてありました。姉は、手紙の説明の通り、おくり物の水に味噌をかして、味噌汁みそしるをつくりました。

これを弟に飲ませますと、みるみる顔色かおいろが良くなり、熱も下がりました。おどろいて自分も一口すすってみると、不思議なことに、あっという間に身体のつかれが取れました。

それからの姉弟は毎日まいにち健康けんこうでありました。宝の水と味噌は、飲んでも飲んでもくならず、二人は元気よくはたらき、だんだんと生活もゆたかかになりました。そして、いつまでも仲良なかよらしましたとさ。

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2 件のコメント

  • 恩返し 昔話に欠かせない洋装てすね。
    どんなお話になるのだろうと楽しみにしていました。

    貧しいけれど、心静かに仲良く暮らしている姉弟。
    いつものように水を汲みに行っただけなのに、しじみを助けたいその優しさが、自分を窮地に陥れてしまう。

    心配した姉は、どしゃ降りの中、弟を探しに走る。
    川辺で水桶を見つけたときは、どんなに心がギュット縮んだことでしよう。
    なんとか見つけた弟に「大丈夫かい、よく頑張った」と
    労いの言葉をかける。
    なんとか弟をおぶって家につき、高熱の弟を寝かせるけれど
    破れた 布団なんですよね。
    2人の普段の生活が偲ばれます(涙)

    看病に必要な水を汲みにまた外に出る姉。
    そして、帰りたい気持ちを抑えて、姉もしじみを助ける。

    このお話は、全編に愛情が溢れています。
    姉弟の全ての行為、行動は、ひたすらの愛情から貫かれています!!
    小さなものに光を当てる頼麦さん、気にも止めないものに
    こころを向ける。
    頼麦さんも、心深くに愛情を抱えていて、作品を作り、
    あらゆるモノから感じた愛情を糧に生きているのですね!!

    しじみからのお礼のお手紙の最後「しじみ一同」この結び
    大好きです!!
    助けられたしじみだけでなく、この話を聞いたすべてのしじみが、姉弟の愛情にこころ打たれたのでしようね。
    このひと言、やられました!!うっ!!ズキュン!! 
     
    こころに沁みたこのお話。
    宝の水のお味噌汁、私も飲みたいなぁ。
    きっと心だけじゃなく、身体中温かさが染み渡るに間違いない

  • 恩返し 昔話に欠かせない要素だすね。
    どんなおはなしになるのか楽しみにしていました。
    貧乏だけれど、心静かに仲良く暮らしている姉弟。
    いつも通りに、水を汲みに行っただけなのに、しじみを助けたいその優しさが、自分を窮地に陥れてしまう。

    心配した姉は、弟を探しにどしゃ降りの中走る。
    川辺で水桶を見つけたときは、どんなに心がギュット縮んだことでしよう。
    生きていた弟に「よく頑張った」と労いの言葉をかける。
    なんとか、おふって帰宅して、高熱の弟を寝かせるけれど
    破れた 布団なんですよね。
    2人の普段の生活が偲ばれます(涙)

    このお話は全編に愛情が溢れています。
    すべての行為、行動が、ひたすらの愛情からのものです。

    頼麦さん、キットカットあなたも心の底に溢れんばかりの愛情を抱えていて、あらゆるモノから感じた愛情を糧に生きているのですね。

    しじみからのお礼のお手紙の最後「しじみ一同」
    ここ、やられました!!大好きです!!
    助けられたしじみだけでなく、この話を聞いたすべてのしじみが、姉弟の愛情に打たれたのでしようね。

    こころに沁みたこのお話。
    私も宝の水の‼️飲んでみたいなぁ。
    きっと心だけじゃなく、身体中に温かさが染み渡ることでしょう。

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