しじみの恩返し
夜咄 頼麦 作
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この文章の著作権は夜咄頼麦に帰属しますが、朗読についての著作使用権は解放しております。YouTubeでの朗読、声劇、そのほか音声表現活動などで自由にお使いください。
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むかしむかし、ある山の奥、川のそばの里に二人の貧しい姉弟が住んでおりました。姉は近所の手伝いをして、弟は水汲みをして、静かに暮らしておりました。
ある嵐の日、弟が強い風の中、川に水汲みに行きますと、何やら、川から声が聞こえてきました。
よく目をこらしますと、少し流れの速くなった川の中に、しじみの子どもたちがおりました。しじみの子どもたちは、川に流されかけながら、助けを呼んでおります。弟は、その子たちを助けてやることにしました。
しじみの子どもたちが助けを呼んでいるのは、浅瀬の少し向こうのあたりです。弟は、じゃばじゃばと足を踏み入れました。川はだんだんと深くなり、しまいには腰まできました。
初めは問題なかったのですが、しじみの子どもたちに辿り着く手前で、弟は不意に強い流れに襲われました。弟は足を取られ、そのまま流されていきました。
姉は、なかなか弟が帰ってこないので、心配になって様子を見に行くことにしました。外に出ると、嵐は強まっております。里の家々の戸は固く閉じられ、外には誰も出ておりません。姉は胸さわぎがして、自然と急ぎ足になりました。
あっという間に川に着くと、姉は弟の名前を呼びました。しかし、返事はありません。川辺には、水を汲むために弟が持ち出した木の桶が、風に転がっております。姉は焦って、川を見渡しました。
そうしますと、下流に突き出した木の幹に、弟が必死にしがみついている様子が目に入りました。姉は急いで駆け寄り、弟の身体を抱えて、岸に引き上げてやりました。
「大丈夫かい、よく頑張ったね」
姉は弟をおぶって、どうにか家に帰りました。弟を破れた布団に寝かせますと、ひどく高い熱を出しております。顔色もよくない様子です。姉は心配になって、看病をしてやることにしました。看病をするにも、水が要ります。姉は弟に声をかけました。
「ちょっと川まで戻って、水を汲んでくるからね。身体を冷やさないようにして、待っているんだよ」
姉は、土砂降りの中を走り、川に向かいました。川は先程よりも勢いを増しておりました。姉が木の桶を拾い、水を汲もうと川に近づきますと、何やら、微かな声が聞こえます。
よく目をこらしますと、流れの速くなった川の中に、しじみの子どもたちがおりました。しじみの子どもたちは、川に流されかけながら、助けを呼んでおります。姉は、その子たちを助けてやることにしました。
木の桶を脇に置いておいて、岸辺の石をいくつかどかします。どかされた石の下で嵐をやり過ごしていた虫たちが、慌てて別の石に潜り込むのが見えました。そうして作った窪地に川の水を流し込み、水たまりをつくったのです。
姉は川に入り、流れの勢いに気をつけながら、しじみの子どもたちを両手ですくいあげました。そのまま岸に戻ると、しじみの子どもたちを水たまりに移してやります。しじみの子どもたちは一安心して、姉に話しかけてきました。
「助けてくれてありがとう。このお礼は必ずいたします」
「どういたしまして。ゆっくりと話していたいところだけど、家で病気の弟が待っているの。ここらでおいとましますね」
姉は弟が心配でしたので、しじみの子どもたちに別れを告げ、川の水を汲んで、家に帰りました。帰る頃には雨も止み、嵐は過ぎ去ろうとしていました。
姉は夜通し弟を看病しましたが、弟の熱は一向に下がりません。気がつくと朝になっており、壁の隙間からは陽がさし込んでおりました。
突然、とんとんと戸を叩く音がしました。姉は、誰だろうと思って土間へ降り、戸を開けました。すると、不思議なことに、そこには誰もいませんでした。
代わりに、何やら大きな水がめと、木の樽が置いてあります。木の樽の中にはたっぷりの味噌が入っておりました。樽のふたの上には、手紙が添えられておりました。
「ヒトのお姉さま、先日は命を助けていただき、ありがとうございました。こちらはお礼の品、宝の水と味噌です。どうぞ、お納めください。しじみ一同」
手紙には感謝の言葉と、お礼の品の説明が書いてありました。姉は、手紙の説明の通り、贈り物の水に味噌を溶かして、味噌汁をつくりました。
これを弟に飲ませますと、みるみる顔色が良くなり、熱も下がりました。驚いて自分も一口すすってみると、不思議なことに、あっという間に身体の疲れが取れました。
それからの姉弟は毎日、健康でありました。宝の水と味噌は、飲んでも飲んでも無くならず、二人は元気よく働き、だんだんと生活も豊かになりました。そして、いつまでも仲良く暮らしましたとさ。
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恩返し 昔話に欠かせない洋装てすね。
どんなお話になるのだろうと楽しみにしていました。
貧しいけれど、心静かに仲良く暮らしている姉弟。
いつものように水を汲みに行っただけなのに、しじみを助けたいその優しさが、自分を窮地に陥れてしまう。
心配した姉は、どしゃ降りの中、弟を探しに走る。
川辺で水桶を見つけたときは、どんなに心がギュット縮んだことでしよう。
なんとか見つけた弟に「大丈夫かい、よく頑張った」と
労いの言葉をかける。
なんとか弟をおぶって家につき、高熱の弟を寝かせるけれど
破れた 布団なんですよね。
2人の普段の生活が偲ばれます(涙)
看病に必要な水を汲みにまた外に出る姉。
そして、帰りたい気持ちを抑えて、姉もしじみを助ける。
このお話は、全編に愛情が溢れています。
姉弟の全ての行為、行動は、ひたすらの愛情から貫かれています!!
小さなものに光を当てる頼麦さん、気にも止めないものに
こころを向ける。
頼麦さんも、心深くに愛情を抱えていて、作品を作り、
あらゆるモノから感じた愛情を糧に生きているのですね!!
しじみからのお礼のお手紙の最後「しじみ一同」この結び
大好きです!!
助けられたしじみだけでなく、この話を聞いたすべてのしじみが、姉弟の愛情にこころ打たれたのでしようね。
このひと言、やられました!!うっ!!ズキュン!!
こころに沁みたこのお話。
宝の水のお味噌汁、私も飲みたいなぁ。
きっと心だけじゃなく、身体中温かさが染み渡るに間違いない
恩返し 昔話に欠かせない要素だすね。
どんなおはなしになるのか楽しみにしていました。
貧乏だけれど、心静かに仲良く暮らしている姉弟。
いつも通りに、水を汲みに行っただけなのに、しじみを助けたいその優しさが、自分を窮地に陥れてしまう。
心配した姉は、弟を探しにどしゃ降りの中走る。
川辺で水桶を見つけたときは、どんなに心がギュット縮んだことでしよう。
生きていた弟に「よく頑張った」と労いの言葉をかける。
なんとか、おふって帰宅して、高熱の弟を寝かせるけれど
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2人の普段の生活が偲ばれます(涙)
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頼麦さん、キットカットあなたも心の底に溢れんばかりの愛情を抱えていて、あらゆるモノから感じた愛情を糧に生きているのですね。
しじみからのお礼のお手紙の最後「しじみ一同」
ここ、やられました!!大好きです!!
助けられたしじみだけでなく、この話を聞いたすべてのしじみが、姉弟の愛情に打たれたのでしようね。
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私も宝の水の‼️飲んでみたいなぁ。
きっと心だけじゃなく、身体中に温かさが染み渡ることでしょう。