【フリー台本】ジャモと虹【読み聞かせ用】

一 おさんぽ日和

ここはひょうたん池のほとりの茂みの中。

枯れ草を集めた小さな巣の中に、鴨たちのおうちがありました。

お父さんにお母さん、そして、お尻がぷりっぷりの子たちが四羽。

それぞれ、アモ、ユモ、ナモ、ジャモといいます。

四羽はいつも仲良し。

今日も何をして遊ぼうか、みんなで話しています。

「今日は雨だし、おさんぽ日和だ!」

「そうね!」

「みんなで池に泳ぎに行こうよ!」

「そうしよう!」

四羽は一緒に池に遊びに行くことにしました。

「夕飯までには帰るのよ」

お母さんは昨日拾ってきたパンくずをそろえながら言いました。

「うん!行ってきまーす!」

子鴨たちは元気に返事をして、ポテポテ歩き始めました。

二 ひょうたん池

外はしとしと雨が降っていました。

目の前の池にはポワン、ポワンと雨の足あとがついていました。

「一番乗り!」

アモが池にとび込みました。

「あ!ずるーい!」

「ぼくもぼくも!」

ユモとナモも急いで後から飛び込みました。

「あ!待ってよ〜」

少し泳ぐのが苦手なジャモは、そろーっと片足ずつ水に入りました。

池の水はひんやりと冷たく、雨で少しにごっています。

四羽は足をパタパタさせ、スイーっと池の真ん中まできました。

池はひょうたんのような形をしています。

ここから先の広い方の池にはまだ入ってはいけないと、お父さんに言われていました。

「なあ!ちょっとだけ入ってみようぜ」

「え!だめだよ〜」

「でも、ちょっとだけなら!」

アモとユモ、ナモは少しだけ広い方の池に入りました。

「ほら、なんてことないじゃん!」

「ほんとだ!」

「ジャモもおいでよー!」

ジャモは風に流されないように泳ぐのに精一杯で、なかなかついていけません。

「ねえ、もう帰らない?」

と、足をパタパタ言いました。

「なんだよ!まだまだこれからだろ?」

「そうだ、いっそ向こう岸まで競争しましょうよ」

「いいね!負けないよ!」

アモ、ユモ、ナモはいっせいに泳ぎ始めました。

ぷりぷりした三つのお尻が遠くなっていきます。

ジャモも必死に追いかけようとしました。

「待ってよ〜!」

しかし、どんどんみんなは離れていきます。

そうするうちに、ピューッと強い風が吹いて、ジャモは横に流され始めました。

「わ!やだ!戻れない!」

風はどんどん吹いてきます。

ジャモはひょうたん池の横っちょまで流されてしまいました。

「池からは風で戻れないな。歩いておうちに帰ろう」

ジャモはトボトボと歩き始めました。

家までは泳げばすぐですが、歩くと遠回りです。

ジャモはすぐに疲れてしまいました。

「ああ、こんなことなら、みんなを止めればよかった」

シロツメクサの草むらにぺたんと座り込みます。

「ちょっとだけ休んでいこう」

ジャモは羽に頭をうずめました。

雨は強くなり、少し体も冷えてきました。

この辺りの草の背は高く、ジャモには遠くを見通せません。

でも、目の前の草むらを抜けなければ、おうちには帰れないのです。

「よし。ちょっとずつでも進もう」

ジャモは立ち上がり、歩き始めました。

三 虹

背の高い草むらに分け入ると、そこは知らない世界でした。

土や花々も、普段お家の近くでは見かけない色です。

ジャモは心細くなりました。

「みんなはもうとっくに帰っちゃったかな。帰りたいよぉ」

目が熱くなります。

涙は雨に混じってはじかれて、しみになりました。

それでも、ジャモは歩きました。

歩き続けていると、パッと視界が開けました。

「あっ!」

ジャモは茂みから飛び出しました。

そして、あっけに取られました。

「きれい!」

背の高い草に囲まれた小さな広場に、アジサイが咲いていました。

それも、紫だけではありません。

藍に青、緑に黄色。

だいだい色に、赤い花までありました。

「すごい!虹みたい!」

風に雲が流されて、陽が差してきました。

大きな葉についた雨粒が、キラキラと光ります。

「こんなにきれいなの初めて!」

ジャモはうっとりと見惚れました。

「あら、かわいいお客さん」

少し後ろから、澄んだ声がしました。

振り返ると、そこには美しい白鳥のお姉さんがいました。

「ここは秘密のお庭なの。きれいでしょ?」

ジャモは大きく頷きました。

こんな場所があったなんて、ずっと家にいたら知らずにいたでしょう。

「ところであなた、一人なの?」

「実はみんなとはぐれちゃったんです」

「あらそれはかわいそうね。家まで送ってあげるわよ」

「本当ですか!」

ジャモは白鳥のお姉さんを頼ることにしました。

お姉さんについて、秘密のお庭を後にします。

最後にしっかりと、宝物を目に焼き付けて。

四 おうちがいちばん

白鳥のお姉さんに乗せてもらうと、家まではあっという間でした。

「ただいま〜」

玄関から中に入ると、みんなは先に帰っていました。

「ジャモ!!」

アモにユモ、ナモが駆け寄ってきました。

「心配したんだぞ!どこ行ってたんだよ!」

「大丈夫?けがとかない?」

「パンあるよ?」

みんな、本当に心配していたのか涙目です。

「無事でよかったわ。まずは身体を拭きなさい」

お母さんが優しく言いました。

でも、ジャモはそんなことより、みんなに話したいことがありました。

風に流されて、どうしようもなかったこと。

ちょっと不安だったけど、歩き続けたこと。

虹のようなアジサイを見たこと。

「みんな!聞いてよ聞いてよ!」

ジャモは目を輝かせて言いましたとさ。

おしまい

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5 件のコメント

  • ほんとの虹じゃなくて、紫陽花の七色に変化するお花の色や、雨粒のきらめきだったのですね。ジャモは、たぶん末っ子なのでしょうか❔末っ子は、自然界ではみんな、苦労してますよね、、ほんわかしたお話し、ありがとぅございました。

  • 雨降り、池、プリプリお尻のカモ、シロツメクサ…。遅れて泳いできたちょっとトロいカモくんは、「ジャモ」なんて可愛いお名前をつけてもらって登場!昨日のお散歩で出会ったものが、こんな風にお話になってしまうなんて、驚きです。ジメジメした雨の日もそんなに悪くはないなぁ…と思えるようなほんわか素敵なお話ですね。

  • 近くの道保川(どうほがわ公園)の池に
    7羽の子鴨を連れた鴨の親子がいました。
    見ていると 決して遠くは離れずに 追いかけています。

    私の隣に男のかたがじっとみています。
    「みんないるな、良かった 良かった」と一人言のように言いました。
    私が顔を向けると 「昨日北里の交差点を歩いていたので
    車にひかれないように 息子と二人でここへ連れて来たんだけど 何処かへ行ってしまったかと 心配でみに来たんだよ、みんないるよ」と嬉しそうでした。
    北里の交差点の200メートル位西にバード️ウォッチングができる貯水池があるのです。
    あのまま東に向かうと北里大学病院の噴水⛲のある池です。鴨のお母さんはそこに向かっていたのかもしれません。どうほがわ公園は自然保護の目的で蛍もいる、
    黄セキレイもいる小さい公園です。
    思いがけず、このお話にあの日のことを思いだしました。
    温かいお話しをありがとうございます。
    写真があるはずなのですが、
    らいむぎさんの表現が子がもを思い出させてくれました。

  • 皆んなと、はぐれてしまったジャモだったけど、しろつめ草の草原や、色とりどりの紫陽花が咲いている秘密の場所、白鳥のお姉さんに送ってもらった事など、ジャモにとっては大冒険だったと思います。
    無事に帰り着いたジャモを、優しく迎えてくれた家族の優しさ。とても心が温まるお話でした。

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