【フリー台本】おやすみハカセ【2~4人朗読声劇用】

 

おやすみハカセ

夜咄頼麦 作

動画版:がすけつ らいむぎ 朗読

https://youtu.be/IE3WH-Vr9q0

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この文章の著作権は夜咄頼麦に帰属しますが、朗読についての著作使用権は解放しております。声劇、朗読ライブ、そのほか音声表現活動などで自由にお使いください。

その際、以下の、この台本のURLを作品などに掲載していただきますよう、お願い申し上げます

https://ryemugi.com/entry/sleepingmaster

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舞台:長野県諏訪市

むぎた少年14歳 上諏訪市在住 野球少年 勉強や睡眠についての悩みを抱える

アガス博士52歳 甲子園出場経験 下諏訪温泉『ヴィヒタ』店長 異名「スリープマスター」

:母。

■ナレーション

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①少年の悩み

◇「でも本当に今回は大丈夫のはずだったんだ」

伝統ある祭りが今に伝わる、湖のある街の片隅に、家族で静かに暮らす少年がいた。歳は14歳。その少年は今、リビングのソファで手元の紙を眺める母親の前で、すっかり縮こまってしまっていた。母親は息子の中間テストの点数に落胆の表情を隠せない様子だ。少年は焦って言葉をつないだ。

◇「勉強だってこれまでより一生懸命やったつもりだし、テストの前日まで徹夜して頑張ったんだ!なのになのに

「いいのよ。あなたが頑張っていたことは知っているわ。でも、この点数は低すぎるんじゃないかしら」

◇「僕だって点数が低いことくらいわかるよ。でも、でも、クラスの中なら悪くない方だと思うんだ」

「そうなのかしらね。特にこの、国語の点数はひどいわね国語は文章を読めば答えが書いてあるって、いつも言っているじゃないの」

◇「そんなことはわかってるよ。人生、あるとわかっていても、掴めないものもあるでしょ?」

「なにわかった風なことを言っているの。あなたまだ中学生でしょ」

◇「中学生でも一人の人間だもん」

「わかったわよ。でも、もし次の期末テストで点数が上がらなかったら、塾に通うことになりますからね」

◇「う

「ちゃんとみんなと一緒に先生に教えてもらえば、成績も今よりは良くなるでしょう。決まりね」

◇「でも塾に通うと、野球が

「野球も続けたいなら、次のテストを頑張ることね」

◇「うわかったよ(あくび)」

「ほら、あくびが出ているじゃない。そんなんじゃ、アガスおじさんに笑われるわよ。勉強で寝不足なんだから、少し部屋で休みなさい」

◇「うんわかった。ちょっとお昼寝してくるよ」

「夕飯の準備ができたら起こしてあげるわね」

少年は教科書とノートでずっしりと重いエナメルカバンを肩にかけ、自分の部屋に続く階段を登った。【むぎたの部屋】というプレートを揺らしてドアを開け、床にカバンを放り投げる。その足でベッドに身体を放り出すと、少年は、大好きな野球選手のポスターが貼られた天井を見つめた。

彼は甲子園に出場するという夢を叶えるためにも、憧れの甲子園常連校に合格したいと思っていた。しかし、推薦だけで入学できるほど甘い世界ではないので、同時に勉強も頑張らねばならない。しかし、そのために塾に通うことになってしまうと、野球の練習時間が短くなってしまう。少年は追い詰められてしまっていた。

◇「助けてよおじさん

高校時代に甲子園に出場したことで、地元では有名なアガス博士は、少年の叔父にあたる存在だった。甲子園を目指す少年にとって、アガスは憧れの存在だ。少年は眠い目を擦りながら、スマホの連絡アプリを開いた。「おじさん」と名前を書き換えたアカウントをタップし「今から遊びに行きます」と送る。

地元のみんなに博士と呼ばれて慕われるおじさんに相談すれば、何かヒントをもらえるかもしれない。のんびり眠ってる場合ではないのだ。少年は、夕飯までに帰ると台所の母に声をかけ、家を飛び出した。

②下諏訪温泉『ヴィヒタ』

バスで15分、湖の反対側にアガス博士の経営する温泉「ヴィヒタ」はある。少年がくすんだ緑色の暖簾をくぐると、受付にいつものおばさんがいた。少年は靴を脱いで靴箱に並べ、軽くおばさんに向かって会釈をすると、彼女はにこやかに奥の通路を指してくれた。目当ての博士は、いつも通り談話室にいるらしい。中庭から夕陽の差し込む廊下をまっすぐに進み、少年は談話室のドアを開いた。

見慣れた談話室は相変わらず散らかっていた。壁一面の本棚から溢れ出した本が床に平積みになっている。アガス博士はその本に埋もれるようにして、奥の作業机に座っていた。丸眼鏡をかけて、何やら分厚い本を見つめ、頭をポリポリかいている。手前には、少年が遊びにくるといつも座る、丸椅子があった。

◇「こんにちは」

◆「ああ、むぎくん。そろそろ来るんじゃないかと思っていたよ。いらっしゃい、よくきたね」

◇「おじゃまします。単刀直入に言います。今日はご相談があってきました」

◆「あはは、本題に入るのが早いね。まあ、まずはかけなさい」

◇「ありがとうございます」

◆「それで、ご相談ってのはなんだい?」

◇「このままじゃ、野球を辞めなきゃいけないかもしれないんです」

◆「ふむそれはまたどうして?」

◇「この前の中間テストの結果があまり良くなくて、次も悪いようだと塾に行かせると母に言われました。塾に通うことになると、放課後の練習を途中で抜けなきゃいけなかったり、交流試合にも出られないかもしれません。どれだけ頑張っても、結果が出なくて野球ができないなんてもう何もかもダメに思えてしまって

◆「塾に行くことになったからって、野球を辞める必要はないだろう?むぎくんは甲子園に行くことが夢なんだろう?」

◇「そうなんですけどもう生きる意味もわかりません

◆「まあまあ、そんなに大きく考えることはない。まずは肩の力を抜きなさい。目の下にくっきりクマができているけど、あんまり寝ていないんじゃないのかい?」

◇「あ実は、ここ最近、テスト勉強をするために、徹夜ばっかりだったんです。終わってからも、将来の不安で全然眠れなくて

◆「なるほどね。むぎくんはまず、しっかりと眠ることから始めた方がいいな」

◇「眠ること?そんなことより、どうやっておじさんは甲子園に行ったのか、その秘訣を教えてください!」

◆「まあまあ、焦ることはないよ。おじさんはね、よく寝る子だったから、甲子園に行けたようなものなんだ」

◇「何を言ってるんですか?意味がわかりません!」

◆「いいかい、良い睡眠を取るということは、とっても大事なことなんだ。例えばむぎくんは、徹夜した次の日に頭がぼんやりしたことはないかい?」

◇「あ確かに良くあります」

◆「それはね、夜のうちにむぎくんの脳がしっかり休めていないからなんだ。人間の脳は起きている間、本当に良く働いてくれている。夜くらいは、休めてあげないといけないのさ」

◇「それはそうだと思いますけど、睡眠と甲子園がどう関係してるのかわかりません!」

◆「例えば、野球の練習で筋トレをするだろう?あの筋トレだって、ずっとやっていると効果は半減してしまう。トレーニングをした後は、しっかり身体を休めてあげる。そうすることで、筋肉が修復されて、前より身体は強くなるんだ。」

◇「前よりも強く

◆「そう、前よりも強くなれるんだ。しっかりと眠って、脳や身体を休めることがどれほど大事か、わかってきたかな?」

◇「はいおじさん!僕、睡眠についてもっと知りたいです!」

◆「いい返事だ。それでは、良い睡眠を取るために大切なことをいくつか伝授してあげよう」

③睡眠一問一答

最初の1時間

◆「眠ると、脳や身体を休めることができることは、もうわかったね?」

◇「はい、わかりました!」

◆「よし。それでは、寝ている時間のうち、いつごろ脳は一番休めているのか、むぎくんはわかるかい?」

◇「えっと寝て、起きるまでの真ん中くらいでしょうか?」

◆「うん、そう思うよね。実はこれは、最初の1時間なんだ」

◇「えぇー!最初の1時間なんですか!」

◆「そうなんだ。人間は深い眠りと、浅い眠りを繰り返すんだけど、その深い眠りの時に一番脳を休めていることがわかっているんだ。寝ている間に、記憶が整理整頓されるって話を聞いたことはないかい?」

◇「あ!それ聞いたことあります!」

◆「そう、あれは深い睡眠のことなんだ。深い睡眠をどれだけしっかり取れるかで、むぎくんが起きている時にやった勉強がしっかり覚えられるかどうか決まってると言ってもいい」

◇「そうか徹夜したのはいけなかったんですね

◆「そういうこと。実は、一番長く深い睡眠が続く時間帯が最初の1時間と言われているんだ。ここさえしっかりと抑えれば、もっと勉強の成果は上がるはずだよ」

◇「でも、おじさん!僕、寝つきが悪い方で、寝てもすぐに目が覚めたりして、すぐに眠れないんです

◆「それはね、少し工夫をしてあげると、改善することができるかもしれない」

◇「本当ですか!教えてください!!」

◆「あはは、焦らずに話していこうじゃないか」

入浴の重要性

◆「むぎくんは、お風呂に入るのは好きかい?」

◇「あ!大好きです!でも、テスト前は時間がなくて、シャワーで済ませたりしていました」

◆「そうだね。忙しいと、ついついシャワーで済ましてしまうこともあるよね。でも実は、湯船には浸かったほうがいいんだ」

◇「え?湯船に浸かることと、睡眠に何の関係があるんですか?」

◆「実は、人間は身体から放熱するときに眠くなっていくんだ。特に手足からの放熱だね。だから、先に湯船で身体を温めてリラックスしておいて、それが冷めてくるときに眠ると一番眠りにつきやすいんだ。」

◇「そうか!映画とかで、北極の吹雪の中、身体が冷えて意識の薄れた仲間に、おい!寝るな!寝るな!って呼びかけるシーンはそれなんですね!」

◆「うーん、ちょっと厳密には違うけど、そんなイメージでも構わないよ。だいたい寝る時間の2時間前くらいに湯船に浸かっておくと、ちょうど良く身体が冷えていいんだよ。」

◇「なるほどえっと寝る2時間前にお風呂、っと

◆「おや、メモを取るとはいい心がけだね。今はスマホでなんでもできて、いい時代だね」

◇「そうなんです!友達にもすぐ連絡できたり、便利で寝る直前までずっと使っています!」

◆「それはもしかすると、睡眠には良くないかもしれないね」

◇「え!どういうことですか?」

ブルーライト

◆「今、寝る直前までスマホを触っていると言っていたよね」

◇「はいいつも、誰かから連絡はないかなーってチェックしてから寝るようにしているんです」

◆「確かに、スマホの通知なんて、気になって仕方がないよね。それでも、寝る直前まで画面を見るのはやめた方がいいかもしれない」

◇「え!どうしてですか!」

◆「スマートフォンの画面からは、ブルーライトっていう、明るい光が出ているんだ。この光を一定時間見続けていると、脳が起きてしまうんだ」

◇「えー!そうなんですか!」

◆「そうなんだ。ブルーライトは太陽光にも含まれていて、太陽光を朝に浴びたりすると目が覚めたりするだろう?」

◇「確かに、カーテンを開けて朝日を浴びると、スッキリしたりします」

◆「そう。それと同じことが、スマホの画面を見続けることで起きているんだ。」

◇「そういうことだったんですね

◆「もしどうしても寝る前に触りたいのであれば、画面を暗くしたり、ブルーライトのカット機能を使ったりするといい。スマホによっては設定できるようになっているはずだよ」

◇「そんな機能があったんですか?今日から早速使ってみます!」

◆「帰ったら設定してみるといい。ブルーライトは白い光にも含まれるから、部屋の灯りも、できれば夜は黄色やオレンジ色の灯りにすると、もっといいかもしれないね」

◇「黄色やオレンジ色部屋の電気の色なんて、考えたことがなかったです!」

◆「人間は浴びる光の色によって、活発になったり、落ち着いたりするんだ。リラックスできる光で過ごした後は、なるべく部屋を暗くしておくと、良い眠りにつきやすいよ」

◇「そうなんですね!知らないことばかりです」

音環境

◆「部屋の環境を整えることも、スリープマスターへの第一歩だよ。」

◇「お部屋の環境電気の色以外にも、何かあるんですか?」

◆「大きく、あと2つある。一つは音だ」

◇「音、ですか」

◆「むぎくんは、寝る時に何か聴いたりすることはあるかい?」

◇「えっと僕は、去年甲子園のテーマソングを歌った、好きなバンドの音楽を流したりしています!」

◆「それで眠れているのかい?」

◇「はい、好きな曲を聴いているといい夢が見れるような気がして」

◆「それならいいね。一般的には、できるだけ静かな環境の方が人は眠りにつきやすいと言われているんだが、これだけは人それぞれなんだ。好きな音楽や好きな声、海や川の自然音を聴くと落ち着くって人もいるね。でも、音量は小さめにした方がいいかもしれない」

◇「毎晩、イヤホンでガンガン聴いていました今日からスピーカーにして、音を小さめにしようかな」

◆「それがいいかもしれないね。今は動画サイトにシャッフル睡眠法や米軍式睡眠法という、眠くなる動画なんてものもあるから、もしどうしても眠れない日には、聴いてみるといいかもしれないね」

◇「シャッフル睡眠法に米軍式睡眠法調べてみます!」

室温

◆「さて、あと一つ、お部屋の環境で大切なことがある。」

◇「あ!そうでした!今日はもう、とことん学んで帰ります!」

◆「よろしい。あと一つは、室温だ。部屋の温度も大切なんだ。日本では、もったいないから寝る前にエアコンを切ったりするよね。これは意外と知られていないんだが、実は、睡眠のことを考えると、エアコンはつけっぱなしの方が良かったりするんだ」

◇「え!そうなんですか!母さんに、もったいないから消して寝るように言われていました!」

◆「普通はそうだよね。でも実は、人間にはそれぞれ眠りにつきやすい温度と湿度というものがあって、どうしても寝苦しい夏や、寒い冬にはエアコンでコントロールをした方が、良く眠れたりするんだ」

◇「へぇー!それは知らなかったです!確かに、夏の熱帯夜とか、冬に寒波が来た時は、それだけで夜中に目が覚めたりすることがありました」

◆「そういうこと。下手に目が覚めてしまうくらいなら、エアコンをつけっぱなしにした方が、睡眠の観点からはよかったりするんだ。ただし、身体を冷やすといけないから、風が直接当たらないようにね」

◇「わかりました。エアコンのことも、一度母さんに話してみます!」

生活リズム

◆「さて、睡眠の重要性から、寝るための準備、室内の環境まで話してきたね。随分と睡眠について詳しくなってきたんじゃないかい?」

◇「はい、もう早く試してみたくてうずうずしています!」

◆「いい心がけだ。では最後に、一つだけ大事なことを教えておこう」

◇「大事なこと、ですか?」

◆「そうだ。一番大事と言っても過言ではない」

◇「一番ですか!教えてください!」

◆「それはね、生活リズムを整えるということだ」

◇「え、生活リズムですか?」

◆「そうだ。一番大事なのは生活リズムだ。睡眠のリズムといってもいい。毎日同じ時間に起きて、同じ時間に眠る。これを身体に馴染ませていくんだ」

◇「同じ時間に起きて、同じ時間に眠る」

◆「例えば、毎日同じ時間に出る学校の給食を思い出すといい。午前中の授業も終わる頃、まだお昼休みの前なのに、お腹が空くことはないか?」

◇「あ!あります!授業の最後の方なんて、その日のお昼ごはんのことばかり考えてしまって、先生の話が頭に入ってきません!」

◆「それは、決まって同じ時間にごはんを食べることで、身体がそのリズムに慣れているんだ。同じことを睡眠についても、身体に覚えさせるといい」

◇「毎日その時間になったら、眠たくなるように、ということでしょうか」

◆「そういうこと。徹夜なんてもってのほかだ」

◇「わかりました、今後はもう、徹夜なんてしません。ちゃんと計画的に勉強して、休みの日も夜更かししないようにします!」

◆「よろしい。これで睡眠の基礎はばっちりだ。よく食べ、よく寝て、勉強も野球も頑張るんだぞ」

◇「はい!アガスおじさん!ありがとうございます!」

④少年ぐっすり眠る

少年はすっかり日の暮れてしまった街を歩き、家に帰った。そして、アガス博士に教わったことを思い出し、まずゆっくりと湯船に浸かった。リラックスして歯を磨き、自分の部屋に戻ると、博士におすすめされた睡眠法の動画を開いた。そのままスマホの画面を暗くして、エアコンをつけ、風が直接当たらないように調節をした。

暗くなった部屋に目が馴染んでくると、天井に大好きなプロ野球選手のポスターが浮かび上がってきた。少年はそのポスターを見つめ、毎日同じ時間に、しっかりと寝て、夢に向かって一歩一歩進んでいくことを誓った。数年後、この湖のある小さな街に、一人のスーパースターが生まれることを、まだ、誰も知らないのであった。

 

おしまい

 

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