【フリー台本】朝焼けの白猫【読み聞かせ用】

 

夏の孤島で夜明け前に散歩に出た。

島を一周して、日の出を見てやろうという算段だ。

民宿の扉を静かに開け、まだ薄暗い夜明け前の階段を慎重に下っていく。

海沿いは観光地、標高の高い場所は島民の住宅地になっているこの島には坂道が多い。

少年期から通う島ゆえ、歩きなれた道を行くとすぐに海に出た。

日中の浜辺は海水浴のために活気づくのだが、日のない時間は閑散とする。

日の出前などはもちろんのことで、人っ子ひとり見当たらない浜を悠々と歩く。

空は薄い紫の雲で、都会の日常を生きているとなかなかお目にかかれない。

ゆっくり歩いていくと、にわかに水平線が白み始める。日の出が近い。

まだ島の東に着いていなかったので、私は少し歩を早めた。

東の浜に着くと間もなく金色の光に包まれていく。

寝起きの体に日のぬくもりが染みていく。

目を細めて水平線を見ていると、背後から私の気を引くような鳴き声がした。

振り向くと真っ白な猫だ。

日の光を背にして、ここが特等席とばかりに石垣の角に座っている。

きっと毎朝、日を浴びるのが日課で、影をつくって邪魔をした私に、どいてくれと声をかけたのだ。

その表情は強く、絶対にここは譲らないとの意志を感じる。

私は猫に向かって「ごめんね」と声をかけながら、少し左にずれた。

すると猫は頷いたと見えるや、すぐに眩しそうに後ろを向いてしまった。

まぶしいからいつも後ろ向きで座って暖まっているのだろう。

先輩の知恵に学び、日の光に背を向ける。

猫は少しこちら側に目を向けてはいるが、逃げるそぶりもなく心地よさげだ。

当然、初めて出逢ったはずの猫だが、なんだか懐かしく感じて、私はしばらく動かずにいた。

日常に戻っても、朝日を浴びる習慣を続けよう、なんて考えながら。

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2 件のコメント

  • 朝配信をしていた頃を思い出しました。
    いーな
    日常の ふっとした 光景
    自然に わく 和み 癒しの 感情
    思わず コラボしたくなる セリフ

    つぎは どんな お散歩風景画でしょうか

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