【フリー台本】瀬戸の三毛猫【1人用 |5分】

瀬戸の三毛猫

頼麦 作

 

この文章の著作権は夜咄頼麦に帰属しますが、朗読についての著作使用権は解放しております。YouTubeでの朗読、声劇、そのほか音声表現活動などで自由にお使いください。

その際、この原作ページのURLを作品などに掲載していただきますよう、お願い申し上げます。

陶磁器で彩られた路地を歩く。

足元には陶器のタイル。高台へ続く階段にも色とりどりの磁器が貼られている。

程よく緑の茂った道路脇にまで、この土地の名産品が散りばめられ、調和している。

かつて、焼き物の街として隆盛した面影を残す風景には趣がある。

陶器の生垣、巨大な焼き窯、煙を吐かない煙突。

閑静な坂道をそろりそろりと上っていると、鈴の音とともに一匹のネコが現れた。

カメラを向けると、ぷいっとそっぽを向いてしまったが、

慌てて逃げるでもなく、泰然としている。

きっと、この街の空気を一身に吸って生きてきた猫なのだろう。

駅までの帰り道、本通り沿いに若いアーティストの陶磁器が土産物として売られていた。

変化の激しい時代の中で、焦ることなく伝統と文化を引き継ぎ、時間をかけて醸成している。

新しきのみを追い求めず、古き良き知恵と技術に根差す。

その知的営みの穏やかさを旅の者に教えてくれた猫であった。

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