上野の海鳥
夜咄 頼麦 作
この文章の著作権は夜咄頼麦に帰属しますが、朗読についての著作使用権は解放しております。YouTubeでの朗読、声劇、そのほか音声表現活動などで自由にお使いください。
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春になって桜の季節になると、学生時代に毎年通った桜並木を思い出す。
初めてその並木を通った時は、あまりの迫力に言葉を失ったものだ。
以来、二年目の桜だなぁ、三年目の桜だなぁ、と毎年思い、六年目にして引っ越した。
引っ越し先の春、花見で賑わう、とある池のある公園。
家族連れや、車椅子を押して通う人もいる有名な花見スポットだ。
公園は大変な人混みで、沿道には屋台などもたくさん並んでいる。
通りがかりに偶然ベンチが空いたので、周囲を伺い、端のほうに腰を下ろす。
池沿いのベンチは大人気で、椅子取りゲームかのように目を光らせる人もいたので、幸運だった。
この公園に来ると、必ずと言っていいほど、この褐色のベンチに腰を下ろす。
そんな矢先、目の前の柵に一羽の鳥が降り立った。
海鳥のような風貌で、白い毛並み、、、羽根並みが美しい。
きっと、この人が集まるシーズンには、人間の撒く獲物を食べにやってくるのだろう。
ここぞとばかりにシャッターを切ると、鳥が羽を伸ばしたので、動きのある一枚になった。
エサを与えないでくださいとの看板もそこここに見られ、これには私も賛同するが、
撒かれるエサのおかげで素敵な写真を撮れたので、複雑な気持ちになった。
それでも、エサを撒くのはやめようね。
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