僕がまだ小さかった頃、洗濯機に落っこちたことがあった。
両親と泊まった新築のホテル。
木の階段を上った二階の踊り場の、場違いな洗濯機。
真っ白くて、やけに格好良くて、夜中に一人で起き出して、中を覗いてみた。
そうしたら、あっという間に吸い込まれてしまって、気づいたら別の場所に居た。
どこもかしこも黄色く染まった世界。
たくさんの本の読めない背表紙。
元いた場所に帰りたくて歩いたけれど、なんだか足はピリピリするし、息苦しいし。
心細くて、目を瞑って泣いてしまった。
でも、独りで居た暗闇の中から、柔らかい声がしたんだ。
「ぼうやはこっちに来ちゃいけないんだよ」
優しい温もりを感じた。
母さんが来てくれた!
僕は嬉しくなって目を開けたよ。
そうしたら、
元の洗濯機の前に座っていたんだ。
なんだ、夢だったのかな。
そう思って、部屋に戻ろうとした僕の靴は、
底が溶けてしまっていた。
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可愛らしいお話。
子供の頃の夢?
靴が溶けていたのは、ちょっと怖い